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中医養生講座3

『中医学の養生法』 第三回「陰陽と食物の四性」

  中医学の基礎理論の中で最も重要なものが、「陰陽論」です。これは元々、中国古代の哲学で、中国の文化、思想に大きな影響を与えてきました。その考え方は、医学にだけでなく、儒教や道教などの宗教、書画や特に民間美術などの芸術、そして、太極拳や八卦掌などの武術にも取り入れられています。中国の理解のためにはまず陰陽論から、というのは言い過ぎでしょうか?

  簡単に言ってしまいますと、「陰、陽という二つの対立する要素の相互作用や変化によって宇宙は構成されている」というのが陰陽論です。四季の移り変わりや昼夜の変化も陰陽によって説明しています。具体的には、「相対的に静止しているもの、内に向かうもの、下降的なもの、寒冷的なもの、暗的なもの」を陰とし、「動的なもの、外に向かうもの、上昇的なもの、温熱的なもの、明的なもの」を陽とします。たとえば、火と水では、火は熱的で上昇的ですから陽に属し、水は、冷たく下降的ですから陰に属します。ただし陰と陽の区分は相対的ものですから、比べる対象によって変化します。たとえば、水は火と比べると陰ですが、氷と比べると、水は氷より動的であり、温度も高いので陽となります。このように陰と陽、二つの単純な要素ですが、相互に作用しあって、自然界の複雑な事物を構成しているのです。DNA中の、アデニン、チミン、グアニン、シトシンというたった四種類の塩基の配列から複雑な生命体が形創られる遺伝子の仕組みにも似ています。この陰と陽の調和が保たれているのが宇宙ですが、中医学では、人間の体も小さな宇宙(ミクロコスモス)だと考えますから、人体も陰と陽の調和がとれていなくてはなりません。この陰陽の調和の乱れた状態が病気だと考えることができます。

  中医学的には、人体内の、「温め、活動の元となり、興奮させるなどの作用を持つ物質または機能」を陽、「冷やし、滋養し潤し、抑制するなどの作用を持つ物質または機能」を陰とします。陽が足りなければ温める力や活動の元となる力が不足しますから、体が冷えたり、無気力などの症状が出てきますし、陰が不足すれば体を冷やしたり陽の力を抑制したりする力が不足しますから、手足が火照ったり興奮気味になってしまいます。このような陰陽の状態から、体質または、その病気のタイプをいくつかに分ける事ができます。前回述べたように、陰陽のバランスの乱れは、主に寒熱の症状として外に現れますから、それを基にして分類します。

  第一のタイプは、陰は正常なのに陽が多すぎる場合(暖房亢進型・実熱証・陽亢証)。部屋内にエアコンのほかにストーブもあり暖房が利きすぎている場合にたとえられる。顔全体が赤ら顔、暑がりで喉が渇き、水をよく飲むなどの症状がある。

  第二のタイプは、陽は正常なのに陰が足りない場合(エアコン冷房不足型・虚熱証・陰虚証)。冷房の利きが悪いので部屋の温度が上がり気味。特に夏がつらい。第一のタイプほどではないが、頬が赤い、手足が火照る、暑がる、寝汗をかくなどの熱の症状がある。

  第三のタイプは、陽は正常なのに陰が多すぎる場合(氷塊型。実寒証・陰盛証)。部屋の中に氷の塊があって部屋が冷える。冷たい物を食べ過ぎたり、体を冷やした場合などに起こる。足腰や腹が冷えて痛んだり、腹を下したりする。

  第四のタイプは、陰は正常なのに陽が足りない場合(エアコン暖房不足型・虚寒証・陽虚証)。暖房の利きが悪いので部屋が暖まらない。特に冬がつらい。寒がりで手足が冷える、疲れ易く元気がない、などの症状がある。

  さて、自分のタイプが判別できたなら次はその対策です。基本は「陽の体質の人は陰を補い、陰の体質の人は陽を補う」です。第一のタイプ(実熱証・陽亢証)には、余分な陽を取り除く治療を行い、第二のタイプ(虚熱証・陰虚証)には、足りない陰を補う(補陰)治療を行います。実熱証も虚熱証もどちらも熱証ですから食物で言えば温熱性の物は避け、平性や寒涼性の物を多く取るようにしなければなりません。特にスイカは体を冷やす力が強く、喉の渇きを止め、利尿作用や降圧作用もありますから、熱証で、血圧が高い人には最適です。また、緑豆も冷やす力が強く喉の渇きも止める作用があるので中国では夏に、お粥などによく使われます。陰を補うには、補陰(陰の力を補う)の働きのある白キクラゲ、黒キクラゲ、白菜、梨、葡萄、桑の実、牛乳、イカ、豚の皮などが効果的です。

  第三のタイプ(実寒証・陰盛証)や第四のタイプ(虚寒証・陽虚証)はともに寒証ですから、寒涼性の食べ物は避け、平性や、温熱性の食べ物を多く取るようにします。葱、生姜、ニンニクなどの温熱性の香辛料を上手に料理に使ったり、羊肉や鶏肉を多く取るようにします。胡桃、韮、蝦、雀、鹿肉などには、補陽(または助陽、陽の力を補う)の働きがありますから効果的です。

  季節との関係も考慮しなければなりません。一般的に、夏は陽の多い季節ですから、陰の多い食べ物を取るようにします。しかし陽虚証の人で夏でも冷えるという人はやはり陽の多い食べ物を取るようにしなければなりません。逆に冬は陰の多くなる季節ですから、陽の食べ物を多く取るようにしますが、陰虚の体質で、冬でも手足が火照るという人は、陽の食べ物をひかえ、陰の食べ物を取るようにします。寒熱に関する体の情報から陰陽による自分の体の状態を知り、治療や養生に役立てる事が大切です。

 *食物四性表の説明

  食物の分類については、・中医飲食栄養学 ・翁維健主編、・中医食療学 ・楊永良主編、等を参考にしました。出典により同じ食物であっても性の記述に相違が見られます。

                                証候弁別表

  証

      概    念

        症      状

陽亢。

熱邪が旺盛。熱によって水分

が消耗。機能亢進。

高熱、赤ら顔、口渇

冷水を飲みたがる、

小便の色が赤黄色く量が少ない、

便秘気味、脈が速く強い。

陰虚。

陰精が損なわれ、滋養と潤沢

冷却作用が減退。

口渇、不眠、動悸、手足が火照る

めまい、午後になると低熱がでる

寝汗、脈が速く細い、頬が赤い。

陰盛。

寒邪が盛ん。

機能衰退。

ひどく寒がる、手足が冷える、

腹痛があれば、押すと嫌がる。

陽虚。

陽気が衰え、暖める作用と

活動の元になる力が減退。

寒がる、手足が冷える、疲れやすい

呼吸が浅く、話しをするのが億劫、

横になりたがる、口は渇かない、

尿は透明、大便は軟らかい、

脈は遅く無力。

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