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中医養生講座5

「中医学の養生学法」

第5回「成人病の予防・その1・高血圧」

  今回は、成人病のひとつ、高血圧を取り上げます。高血圧は、脳出血や心筋梗塞など生命に関わる重大な病気を引き起こします。予防や早めの改善が必要です。

  高血圧とは一般に、収縮期血圧が140以上、拡張期血圧が90以上のものを言います。高血圧症には、西洋医学的に見て、腎臓や内分泌系などの異常が原因のものがありますが、大部分は本態性高血圧症と呼ばれる原因不明のものです。

 それでは中医学では、と言うと、実は、古来の中医学には、高血圧という用語はないのです。昔は、血圧計自体がなかったのですから、あるはずがありません。けれども、昔に高血圧症の人がいなかったという訳ではありませんから、現在の高血圧症と見られる症状の記述はあり、近代になって血圧を計れるようになってからは、高血圧症の中医学的解釈もなされています。

 それによると、陰陽バランスの乱れに、長期の精神的ストレスや感情の乱れ、または、酒や辛い物、甘い物、脂っこい物の取り過ぎが加わり、肝の陽が強すぎて起こるとされています(肝火上炎証)。また肝と腎の陰が不足して(肝腎陰虚証)、冷やす力が足りなくても起きやすくなります。

 高血圧症は、身体が冷えるタイプ(寒証)の場合もありますが、そのほとんどは、暑がりで、顔が赤っぽく、喉が渇きやすい、といった熱証のタイプです。そして特に肝が熱を持つと、高血圧症となりやすいのです。

 肝という臓器は、気血の流れをスムーズにしたり、感情をコントロールする働き(疏泄作用)や、血を貯え、全身の血液分布を調節する働き(蔵血作用)を持っています。西洋医学的に言えば、自律神経など神経系の調節に関与しているとも言えるでしょう。

 肝は、もともと熱を持ちやすい臓器で、怒りなど、感情的なストレスに一番弱い所です。酒や辛い物、甘い物、脂っこい物はいずれも、ガソリンタイプの「温熱」の食物です。これらを食べ過ぎ、しかもイライラ!カッカ!と感情的にも熱くなれば、もともと熱くなりやすい肝はオーバーヒートを起こし、肝の機能は低下し、気血の流れや感情、血液分布の調節機能は弱まり、ますます怒りっぽくなり、体にはさらに熱がこもり、血圧が上がる、というわけです。高血圧は、脳出血や心筋梗塞などを引き起こしますから、「最近、血圧が高めだ!」と思ったら、早めに予防しましょう。

  さて、予防で、まず考えたいのが食事です。基本は、まず酒や甘い物、脂っこい物など「温熱」のものは取り過ぎないこと。これは、連載第3回の食物四性表をご参照ください。表中の温熱の欄の食物を取り過ぎないようにしなくてはなりません。

 次に、体の熱、特に肝の熱を冷やし、肝の機能を高める作用のある食物を多く取ることです。純菜、トマト、キュウリ、クロクワイ、バナナ、昆布、柿、セロリ、冬瓜、西瓜、ニンジン、トウモロコシ、リンゴ、梨、茄子、豆腐、そば、春菊、クラゲ、うずらの卵などはいずれも、「寒涼」か「平」の「性」で、体の熱を冷ましたり、肝の働きをよくする作用を持つ食物です。

 また、中医薬として高血圧症の治療によく使われ、しかも比較的一般の人にも使いやすい物としては、菊花、桑葉があります(連載第2回参照)。それぞれ10gを急須に入れ、お湯を注いでお茶代わりに飲むとよいでしょう。中国ではこれらが主成分でティーバッグになった製品も何種類か出ています。

 血中のコレステロール値も高いという人には、血の流れをよくする作用(活血作用)のある、サンザシや桃が有効です。ただし、これらは性が温ですから、取り過ぎないように注意しましょう。その他コレステロール値を下げるものに、椎茸、レモン、棗などがあります。

  ここで、中国で用いられてきた高血圧症のための薬膳をいくつかご紹介します。

レモンとクロクワイのスープ

  [材料]レモン1個、クロクワイ10こ

  [作り方]レモンとクロクワイの皮をむき、細かく切り、適量の水を加え煮る。

 [適応症]高血圧症、心筋梗塞

棗とセロリのスープ

  [材料]棗100~200g、セロリ350~700g、黒砂糖少量

 [作り方]セロリを細かく切り、棗と適量の水を加え、煮る。好みで、黒砂糖で      味をつける。何回かに分けて服用する。

 [適応症]高血圧症、高脂血症

菊花粥

  [材料]菊花10g、米50g

  [作り方]先に菊花を適量の水で10分ほど煎じ、糟を取り除いた後、洗った米      を加え、お粥にする。空腹時に食す。

 [適応症]高血圧症やそれにともなう頭痛、目の充血

  予防法の第二番目には、精神の安定を保ち、肝の働きを保持するという意味でも、気功が有効です。興奮した直後に血圧を計って、あまりに高くなって驚いた、ということはありませんか? 興奮すれば、交感神経が働いて血圧が上がるのです。逆に、リラックスした状態では、副交感神経が優位に働いて、血圧が下がります。これらは自律神経の働きですが、この調節能力を気功によって高められることが知られています。

 気功は、動作と呼吸、そしてイメージの鍛錬によって身体のいろいろな調節能力を高めていくのです。気功では、高血圧とは、濁った気が身体の上部に上がったまま降りない状態と考えます。この気を下げなくてはなりません。ここで、簡単で、しかも効果の高い「降圧功」をご紹介します。

     「降圧功」

  動作と呼吸

1.両足を肩幅に開き、膝をゆるめ、両腕は体側に。全身の力を抜きます。

2.鼻で息を吸いながら、両腕を万歳するように上げます。頭上で両指先を向かい 合わせ、掌は下向きに。

3.口でできるだけゆっくり息を吐きながら、できるだけゆっくり両掌を下に向け たまま、体の前を降ろしていきます。

4.息を吐き終えたら、1の格好のまま息をしばらく止めます。

5.再び、2から動作を続けます。これを8回。

  イメージ

*1と2の動作の時には、無念無想。

*3の時、身体上部の濁った気が掌とともに下へ降りていくのをイメージします。

*4の時、降ろした濁った気が、両足を通って、足の裏から地面へ流れ出るのをイメージします。

  注意

*吐くのはできるだけゆっくり。吐く時間が吸う時間の2倍以上になるように。

*立ちくらみする人や低血圧の人にはこの気功は向きません。

 次回は、成人病のつづき、「糖尿病」を取り上げる予定です。

 

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