御予約はこちらのバナーをクリック⇒banner

中医養生講座4

「中医学の養生法」    第4回「ガンの予防」

  日本人の4人に1人がガンで亡くなっています。なりたくない病気の上位に入るることはまちがいないでしょう。はたしてガンを予防することはできるのでしょうか?

  歴代の文献中には、ガンについて専門に書かれたものはないのですが、ガンに関する論述、治療法については多くの記載が見られます。現在、中国では、中医医院に腫瘍科が設けられ、西洋医学的な取り組みとともに中医学的な治療法がなされており、よい成績をあげています。また、中医理論を基に、新しく開発された薬も多く、「天仙液」などは日本でも話題になりました。猪苓という中医薬から作られた「猪苓多糖注射液」は、筆者の研修した東直門医院の腫瘍科でも使われており効果をあげていました。

 中医学では、ガンは、「病因により、陰陽の失調、身体の機能の失調が起こり、邪気が体内に凝集してできたもの」と考えられています。前回述べたように、陰陽の調和がとれていることが健康の条件ですから、これを乱すものが病気の原因だということができます。病気の原因には、身体外部からの原因(外因)と身体内部の原因(内因)とがあります。ガンの場合、外因としては、環境因素、飲食因素があげられ、内因としては、正気不足や精神因素があげられます。急激な気候変化や暴飲暴食、自分の体質に合わない食事などが環境因素や飲食因素に含まれますが、放射線や発ガン性物質などもこれに含まれるでしょう。

 さて、ガンを予防する上で見逃してはならないのが内因です。内因の中でも「正気不足」は重要です。正気というのは、身体の機能を正常に動かすためのエネルギーのことです。一方、体に悪い影響をあたえ、病気の原因ともなるエネルギーのことを邪気と言います。邪気には、熱の邪気や寒の邪気など体外からのものや、体内の機能の失調によってできた病理的産物なども含まれます。中医学の古典『黄帝内経』に「正気、内に存せば、邪、おかすことあたわず」とあります。これは、正気が体内に充実していれば、邪気におかされることはない、つまり病気にならないということです。

 つまり、正気とは、西洋医学で言うところの「免疫」の考え方を含んでいることがわかります。生体内免疫系の働きの一つに「免疫監視機構」があります。これは、細胞が突然変異してガン化することを防止する機構です。細胞が変異するとこの機構が働いて、変異した細胞を排除してガンの発生を予防します。中医学的な正気を増やす方法(扶正法)によって、この免疫の働きが強まることが報告されています。老化にともなってこの正気は不足しがちになってきますが、これは、高齢者にガンの発生が多い事と無関係ではありません。正気を増やすことが、ガンを予防する上で有力なのはまちがいありません。

  また、もう一つの「精神因素」もチェックが必要です。最近では、西洋医学でも「心療内科」が設けられるなど、精神因素と病気との関係にも注目し始めたようですが、中医学では早くから、精神的な要素が直接、病気の原因になりえることを説いてきました。特に七種類の感情、喜、怒、憂、思、悲、恐、驚(七情)の過剰や不足が体内の臓腑の働きを弱め、病気を発生させるのです。

 ガンの治療においても心理療法が有効である事が報告されています。アメリカのガンの臨床医であるサイモントン博士らによって開発されたサイモントン療法は、心身の緊張を解くリラクセーションや、体内の免疫機構がガン細胞と闘う様子を思い描くイメージ法などで構成され、確かな効果をあげているようです。また、倉敷市の伊丹仁朗医師は、患者を笑わせたり、モンブラン登山をさせたりなど「生きがい療法」を実践していて、実験によっても、「笑い」によって、体内の免疫力が向上することを実証しています。精神状態・心理状態をよい状態に保つことは、ガンの予防はおろか、治療にも効果があるということです。

  実際の予防法ですが、ガンの原因から「正気を増やす」事と「精神の安定」の二つの方面が考えられます。中医薬の中で扶正薬と称される一群の薬が正気を増やす働きをもちます。実験によっても、免疫促進作用のあることが確認された中医薬も少なくありません。主なものをあげると、朝鮮人参、霊芝、茯苓、熟地黄、当帰、肉桂、枸杞子、冬虫夏草、何首烏などです。これらは、体質に合わせて用いなくてはならず、使用には注意が必要です。しかし、茯苓や枸杞子は性質が穏やかで、誰にでも比較的使いやすい中医薬で、お粥などの料理にも気軽に使えます。

 食物では、純菜(寒)、キウイ(寒)、桑の実(寒)、昆布(寒)、、菱の実(涼)、はと麦(涼)、大豆(平)、エンドウ(平)、椎茸(平)、白きくらげ(平)、スグリ(平)、すっぽん(平)、ナタマメ(温)、アスパラガス(温)、韮(温)、棗(温)、なまこ(温)などの抗癌作用が知られています。中医薬同様、個人の体質に合った「性」の食物をとる必要があります。(括弧の中は、四性。第2回を参照)

 指圧や鍼、灸による足の三里、関元(へその三寸下)などのツボへの刺激も正気を増やすのに有効です。 精神の安定には、気功の鍛錬が有効です。ガンの治療においても「郭林新気功」などが効果をあげています。また、正気を増やすという意味においても気功は有効です。気功の鍛錬によって、免疫力が上がることも報告されています。

  中医学の理論を知り、自分の体質を知り、自分に合った予防法を続けることが、ガンの予防に限らず、養生のためには、有効なのです。

 

Copyright© アキュサリュート高輪 All Rights Reserved.